はじめての歌 Part D
優しいバラードのくせして、大人びた歌詞。
最初にこの歌をもらった時、思い浮かべたのはあの人だった。
「やっぱ、女の子の方が情緒面の成長早いんだろうな」
「え?」
ファーストエディションから2週間。
それぞれ別録りで迎えた収録日に、ショウさんはそんな事を呟いていた。
「レンじゃこんな歌はうたえないだろうなって話だよ」
「レンは・・・マスターに似たんだと思う」
「あぁ・・・確かに・・・」
じゃぁさ
「リンは誰に似たんだ?」
「たぶん、ショウさん」
「俺?」「うん」「・・・お前のマスター春薙だろ」
私たちの調整は殆どショウさんがやってくれるでしょ?
だからサブマスターて言っていいと思うの
「だからショウさん」
「・・・・俺に似て、そうなれるんだったらカイトにも俺に似てほしかった」
「カイ兄?」
「さんざん何度も録りなおしてさ」
結局辿り着いたのがこれ。
そう言いながらショウさんが流したのは、聞きなれた優しいテノール。
「・・・・・」
「まるでさ、必死で背伸びし始めた中学生みたいだろ?」
「・・・でも、カイ兄らしいよ」
「・・・まぁな」
これじゃ兄と妹じゃなくて姉と弟だろ。
「マスターとショウさんみたいな?」
「春薙に言ったら泣くぞ?」
「言わないもん」
「・・・本当に、誰を思い浮かべてるんだか」
ついこないだ、俺に泣きついたくせに
「え?」「ついこないだなんだよ、カイトが二次成長したの」
「・・・・・・背伸びしてるんだねぇ」「してたなぁ」
まさに、この歌を自で行くような奴だよ。
「そんな奴がさ、ほんの1週間でいったいどんな相手見つけてきたんだか」
「うーん、言われるまで気づいてなかっただけとか?」
「それあり得る。」
ところでさ
なぁに?
「リンは誰を思って歌ったの?」
「ないしょ」
「えぇ・・・」
「じゃぁショウさんの相手教えて?」
「やなこった」
++++
あとがきもどき
カイリン、と銘打ってはいますが…正確に言うと
「カイト、初恋物語」
的なものです。
リンは実は1番大人びている子なので
外見年齢の割に成長の遅いカイトがリンを追っかける形になるかと
カイトがそういう方面で成長するきっかけが、この話の歌であり。
きっとリンだったからこそ…じゃないでしょうか
多分ね、はじめから兄さん、リンにどこかしらあこがれ的なものがあったんじゃないでしょうか