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「リン」

「なっ･･･なに！？」

「今度の日曜、あけといて」

「へ？」

勝手にも、ほどがあると思う。

青い人の自己満足

ちょっと強引だった･･･夜のあと

カイ兄は急にそっけなくなった。

後悔してるとは言ってなかったけど、実はしてるんじゃないの？
そう思ってしまうほど、そっけない。

確かに強引だったけど、拒まなかった時点で同意の上だったし
その後も気遣ってくれたのはわかるけど･･･
次の日から急にそんな態度を取るって男としてどうなんだろう？
メイ姉に相談しようかとも思ったけど
流石に気恥ずかしくて、どうしようもなくて･･･

色々と考えていたのに、突然向こうからのアプローチ。

涼しい顔をして実はってこういうこと？
こっちの予定も聞かずに勝手に決めて、勝手に帰って。
了承もなにもしていないのに、そういうことになって。

勝手なのに、結局こうして･･･カイ兄の隣を歩いている時点で
強引な誘いでも、文句を言ってても
あんまり説得力はないかもしれない。

滅多に乗らない電車に乗って、ついた先は
最近出来たばかりのショッピングモール。

目的地についても、行くまでも、お互い口は開かない。

滅多にないぐらい冷たい雰囲気のカイ兄が、少しだけ怖かった。

＋＋

人ごみの中を歩くのに、ようやく名前を呼ばれて差し出された手を握れば
グイグイと引っ張ってどんどん建物の中を進んでく。

いつもなら、色々とどこ行きたいか聞いてくれるのに
今日はそんな気もないらしい･･･

好きなとこ行きたいなら、わざわざ私を連れてくることもなかったのに･･･

はじめての場所で、彼がどこに行きたいのかもわからないし
ここがどこかもわからない。

ただ、店の並びを見る限り･･･女性関係のフロアなのはわかる。
（こういうところは殆どそうだと思うけど）
私が着るのは早すぎる、煌びやかな店が並んでいる。
こんな所にいったい何のようだろう？

迷いなく歩いていたカイ兄は、少しスピードを落として角を曲がると
ちょっと雰囲気の硬い、とあるお店に私を連れ込んだ。

私が好きなスポーツ系でもない、ミク姉が着るみたいなカジュアルでもない
ルカ姉さんに似合いそうな、カッチリとした服が並んだお店で。

カイ兄は店員さんに声をかけて、何かの入った袋を受け取った。

「リン」「え？」「これ、着替えて」

大きな袋を手渡されて、そのまま店員さんに導かれるままに更衣室へ･･･
何がなんだかわからないけど、とりあえずこれを着ればいいらしい。

白を基調とした、青のアクセントの入ったコートワンピース。
派手じゃないけど、品が良いそれと
フリルの可愛いシャツに、リボンタイ

それから黒いストッキングとパンプス。

頭のリボンは黒いカチューシャで、ピンは着替える前に取られてしまった。

更衣室から出れば、満足そうに笑う彼の姿。
鏡越しに見た自分は、憧れの姉のような年頃の女性に見えなくもなくて･･･

ううん

きっと、私は一人前の淑女。

社交界にデビューするのは15才、年頃的にもきっとちょうど良い。

ちょっと気取って手を差し出せば、カイ兄は微笑みながら手を取って

洋服に助けられて少しだけ背伸びした私をエスコートするように

ゆるやかに手を引いた。

End

KAITOのマイフェアレディ、ってイメージで書いてみました。
気に入っていただけたら嬉しいです