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注意

こちらは悪ノシリーズを元に、登場人物の性別を反転して書いた小説となっています。


ただし、反転といってもただ入れ替えたというわけではなく・・・



「性転換亜種」



による反転となっています。


配役としましてはこのようになっています。



リン(悪の娘)→リント(悪の王子)
レン(悪の召使)→レンカ(悪の王子の影武者)
ミク(緑の娘)→ミクオ(緑の人)
カイト(青い人)→カイコ(青の娘)
メイコ(赤き鎧の女戦士)→メイト(赤き鎧の戦士)


出てこないキャラもいますが・・・この配役でもOKの方はよんでやってくださませ・・・
続きからどうぞ・・・





+++







その国は、栄えていました。
歴代の、〝国において〟正しき賢帝の下。


〝国〟は栄えていました。

 

 

 

 


私は、レンといいます。レシオン=フィン=ドートゥリシュ。
その地方で最も栄えある王国の、王女として生を受けました。

しかし、この国では〝双子〟は災いの象徴であり。
兄である双子の片割れを残し、私は生まれてすぐに消し去られるはずだったところを
母である正妃の言葉により、何とか生きることを許されました。

ただし、正妃の子ではなく…数多くいる妃達の一人の子として。
その存在は、王宮の中だけの幻として。
王国の栄えある歴史の〝傷〟として生きていくことになりました。


王宮の中で、私は忌むべき存在でありましたが。
何を言われようと王女であることには変わりがなく…
私を生かしてくれた母は、産後具合が悪く。
寝たきりの事が多かったのですが、私を確かに娘として愛してくれました。

どれだけ陰口を言われようとも、父に憎まれようとも。
私を〝私〟として扱い、誰も呼ばない愛称をつけてくれた
双子の兄と母だけが、私の心の支えであり光だったのです。

 

しかし、10歳を迎えた頃のことです。
母が亡くなり、私は最大であり唯一の後ろ盾を失いました。
正妃である母の口ぞえで、私は王宮で暮らすことを許されていたのです。
どうしようとも、私の存在は王宮から消え去るはずでした。

 


「オレの〝影武者〟としてならいいだろう!!??」


そんな、兄の言葉がなければ。

双子の兄は、一人跡取りとしての教育を受け。
その時すでに王としての器、片鱗を見せ始めており
家臣からは将来を期待される存在となっていました。
そんな兄の言葉は、王宮内でそれなりの力を持ち

そして…


そんな大事な王子の影武者という存在は
王宮が喉から手を伸ばすほど、捜し求めていたものでした。
その時から、私の衣装は女物から、王子とよくにた男物に変わり
一部の教育を一緒に受けさせられる事となりました。


誰も居ない、休憩時間。
兄は何度も何度も泣きながら私に謝りました。


「ごめんな、レン。ごめんな」


跡取りといえど、その発言力はまだまだ小さく王に敵うものではありません。
考えて考えて、一か八かで怒鳴るようにした発言が通り
私は宮殿に存在できることとなりましたが
その存在はさらに深く隠される存在となってしまった事を
兄は心から悔いていたのです。


「父上は・・・オレ達を遅くに授かった。順調に行けば成人と同時にオレが王となる」

そうなったら、そうなったら・・・

 

「レンを、王女にもどしてやれる」
オレの、妹として・・・義理の妹としてなら王女として嫁に出すことが出来る。


この国になんていることないんだ。


「ごめんな、レン」
どうかそれまで・・・生きてくれ。

 


王子の影武者としての道は容易いものではありません。
完全なる王子の影となるべく、その日から私の修行は始まりました。
元々王女として過ごしていた身には、耐え難いものでありました。

毎日毎日、血反吐をはくような思いでも
それでも生き延びてこられたのは…兄の存在があったからでした。
兄の、その涙があったから。


あの日から、私の光は兄でした。


教師の目を盗んでは、ひそかに私の元に通い。
剣の相手やこつ、勉学の知識。女の身でも扱いやすく仕立て直した王子の剣など。
ひそかに助けてくれた彼は、私の中で神にも等しいものとなったのです。

 

 

兄は、王子として心からこの国を想っていました。
でもリン―リゲル=ディア=ドートゥリシュとしては違うと・・・
私の兄としてはむしろ憎んでいると何度も私に語っていたリンは
成長するごとに、段々とその発言力を伸ばしていきました。

その成長と共に老いていった国王は、私達が13を迎える頃に息を引き取り。
国王の座は、兄の元に想ったよりも早く転がり込んできたのです。
とはいってもまだ成人前・・・父の信用も厚い大臣達が宰相として補佐につき
成人を迎える2年の間国を動かしていくことになりました。

 


誰もが、新たな国王の作る国の繁栄を・・・新たな時代の幕開けを信じていましたが。
兄が王位についた途端、国はどんどん転げ堕ちて行く事になるのです。


いつのまにか…その堕ちていった国を象徴する存在として
兄は〝悪の王子〟と呼ばれるようになりました。

 


ひとつ断っておきたいのですが・・・王子が、兄が望んでそうしたわけではないのです。
兄は確かに国を想い、拙いながらも必死に働いていました。
ところが・・・その想いは、まず宰相達の手に渡りまず審議を受けます。
その場で通ればいいのですが、大抵のものはそこで却下され
宰相たちの独断で、全く異なった政治が行われていたのです。
王子が幼い事を利用した、信頼厚かったはずの宰相達の…裏切りでした。

 

兄は、王子はそれを決して知らされず。
国が何とか自分の手で回っていると信じきっていたのです。
彼の元には、今まで以上に多くの税金が舞い込んで来たことを
自分の政策によるものだと信じきっていました。


その想いが間違っていたと知るのは
兄が私を伴い、城下町へと降りたときのことです。

昔は簡単に出られたのに、最近は全く出られない事を不満に想った兄は
誰の許しも得ずに、抜け道を使って王宮を抜け出し
すっかり寂れきった城下町を目にしました。


兄は愕然とし、すぐさま城に帰ると宰相を問いただしたのです。

「そんな報告は聞いていない!!」


宰相は、そんな兄の言葉をあざ笑うように兄を自室に軟禁し
私を〝王子〟として表に出すようになりました。


いつも毅然とした兄が呆然とし、泣き喚き。
そんな兄を無理やり押し込めた部屋は荒れ果て・・・
私達が話すことを嫌がる宰相を何とか説得して
部屋を数日ぶりに訪ねた時には、兄はやつれていました。

 

「宰相を呼んでくれ」

それでも、いつもの調子を取り戻していた兄は
何度も宰相を呼び出しては説得を試みましたが上手くいかず
ますますやつれてきました。


それでも
「レンを緑の国へ嫁にやることだけは諦めない」と笑っていました

 

隣国である緑の国なら双子を忌み嫌う風習はなく
同年代の王子もいるし、何よりこの国より立場は下。
向こうに断る理由はないはず・・・


「信じてくれるか?」
きっとアイツもこれは反対しない。
マイナスの事はないんだから…

何度も粘り強く交渉するうちに、何とかなりそうだと笑っていた兄の顔が…


笑っていた兄の顔が最も悲痛に歪んだのは
緑の国との婚姻の話が本決まりになりつつあった14歳の頃。

突然の、先方からの断りの文。

 

慌てて間者を送った先から届いた情報は、あまりにも酷いものでした。

 

 


「想う女(ひと)ができた」というのです。

 


その女の所在はわからず、いくら先方に文を送っても返事は返ってくることはなく…
この緑の国の態度が、兄の…宰相の、国のプライドを大いに傷つけ
緑の国の信頼を地に貶めたのは言うまでもなく。

隣国は、戦火に消えました。

 


緑の国を責め滅ぼした後・・・それでも兄は
「絶対、お前だけでもこの国から出してやると」
笑っていたのです。


もしかしたら、この頃には…兄は何かを悟っていたのかもしれません。

 

 

 

 

国全体が貧しくなる中、戦争など起こせばさらに国は貧しくなり。
ほんの4年ほどの間に積もりに積もった怒りは
ついに、王家に向いたのです。

 

その時、混乱した王宮の中で

私は、ついに自分の存在理由を示すべき時がきたのだと。
母国が滅ぶというのに、心からの喜びを感じていたのです。


その喜びのまま王子の部屋に飛び込むと。
そこにいた王子にすぐさま逃げるようにといいました。

ところが、兄は微笑むと…私にドレスを投げてよこしたのです。

 


「それ、できることなら嫁入り前に渡したかったんだけどな」

 

何を言っているのか、わかりませんでした。

 


「…王子?」

「それ着替えて、すぐ逃げろ」
あ、見ないから安心しろよ?


「…王子」


「女子どもに手をだすバカはいないだろ」
狙いはオレだからな


「……おう、じ」

 


「ほら、早くしろって」
淑女(レディ)の仕度は長いんだから。

 

「王子!!!!私はっつ…「いいから着替えろ!!!レンっつ!!!!」

 

 


「うん、似合う似合う」
オレの目に狂いはないな


「…王子、今からでも…「遅いって」


もう相当奥まで来てる。

 


窓から外を見る兄は、相変わらず毅然としていた。

 


「だ、めです」


だめ

 


だめだよ

 


そんな兄とは違って、私は泣いていた。

 


「全く、お前いつからそんな泣き虫になったんだよ」

 

「・・・だめ、なの」

 

 

 


「レシオン」

お前は、何も悪くない。

 


「影武者なんてしなくていいから」

 

「・・・・・おうじ」

 


「こんな時までそれか?」

 


「・・・・リン」

 

「なんだ?レン」

 

「・・・だめ、だよ」
あなたは、わたしの・・・


「お前はオレの妹だ」
兄が妹守って何が悪いんだ?

 

 


同じ血が流れているというだけで
せっかく母上がのばしてくれた命を亡くすことはないんだよ。

 

「ほら、いけ」

 

 


ごめんな、レン。

 

 

「幸せになれよ」

出来ることなら、俺が見送りたかったけど。

 

 

今まで苦労させた分、何倍も幸せになれるように祈ってるよ。

 

 

 

 

 

泣き崩れる私の前から、兄は姿を消しました。

 

 

 

 

 

 

その後、この地方に伝わってきた〝悪の王子の最後〟は

 

王座に一人座り、ただ前を見据えて。
それこそ何でもないことのように・・・

 

「無礼者!!!」

 


と、王宮に無断で入り込んだ反乱軍を一括したというのです。

 

牢屋から断頭台に向かうために出される時に時計を確認して
「あぁ、おやつの時間だな」と少しだけ嬉しそうに笑っていたとも伝わっています。

 

 

今となってはどれが真実なのかはわかりませんが…
ひとつだけ、わかることがあります。

 

 


彼は…兄は、リゲルは。


誇りを持って、死んでいったのだと。

 

兄として、王子として。

 

最後までその矜持を保ちながら。

 

 

 

 

 


―とある修道院にて
とある修道女の日記より抜粋。

 

 

 



End


・・・いっかい、やってみたかったんだ。

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